大阪市営バス乗車記・その1
3号系統(大阪駅前→なんば→大阪駅前)

 1997年6月1日(日)の昼下がり、今日は大阪駅前から御堂筋を南下しなんばに至り、そこから四つ橋筋を北上して大阪駅前にもどる循環路線の「3号系統」に乗ることにした。
 黄色4番のりばに車体番号42-2171の日野製リフト付きバスがやってきた。この路線は1994年11月30日から運行開始された新しい路線である。同じところに地下鉄が走っているのに、なんでこんなもの走らせたのかなと思う方もおられるかもしれない。便利で速い地下鉄も、お年寄りや体の不自由な方にとっては垂直移動が多く乗るためにはひと苦労、そこで、「ひとにやさしいまちづくり」の一環として、お年寄りや体の不自由な方にも気軽に都心部移動に乗ってもらおう、という趣旨で走り始めたとのことである。しかも、この路線は全車が「リフト付きバス」である。
 13:26に大阪駅前を発車する。阪神・阪急百貨店の脇をとおり、御堂筋へ向かって南下する。Y字路にぶつかるとそこから「大阪の顔」ともいうべきメインストリート・御堂筋である。御堂筋は6車線あるが、全線南行き一方通行である。余談だが、大阪市では南北の大通りを「筋」、東西の大通りを「通」というので、わかりやすい。堂島川に架かる大江橋を渡ると左手に大阪市役所の本庁舎が、その向かいには日本銀行大阪支店の瀟洒な洋風近代建築が見える。土佐堀川に架かる淀屋橋を渡ると、両脇には立派な銀杏並木と側道を備えた通りになり、美観地区に入る。2年ほど前までの約50年にわたって、百尺(31m)規制で建物のスカイラインが見事にそろっており、いかにも大阪のメインストリートにふさわしい偉容をたたえている。しかし、時代の流れで、高さ制限が50mに緩和された。そのかわりに、前面には楽しく歩行者が歩けるようにセットバック(壁面後退)することが求められるとのことである。この通り沿いには、日本生命・三和銀行の本店や、銀行・商社などの支店が立ち並んでいる。今日は日曜だというのに、紺色のリクルートスーツで身を固めた学生たちが目に入る。マスコミではもう就職戦線も終盤とのこと、がんばれとエールを送りたいところである。
 13:42、心斎橋で10人ほど下車。お年寄り、若者半々くらいである。そごう・大丸の間にバス停があるので確かに便利である。右手になにわの若者文化の発信地・アメリカ村をちらっと見て、さらに南下、立て替えでグリコの看板抜けてちょっと寂しい道頓堀を渡ると、13:49なんばの「おりば」に到着する。眼前には高島屋とサウスタワーホテルがそびえている。
 ここで私以外の全員が下車する。また大阪駅までもどろうと思っているので、このまま乗っていてもいいかと運転手さんにたずねる。大阪に行くなら前にいるバスに乗り換えなさい、といわれたが、「バスに乗るのが目的出るので」といったら、ちょっと呆れ顔をされてしまった。ここは我慢である。
 確かに、なかなかなんばを発車しない。ちょっといらいらしてくる。20分ほどして、やっと動き出す。ここで9人乗車。左手に元・南海ホークス本拠地、現・住宅展示場になりはてた大阪球場を見て北上し、JR難波駅のある「OCAT」横を通る。ここも、御堂筋線・南海電鉄なんば駅からの遠さが響いて、残念ながら赤字だと聞く。北行き一方通行の四つ橋筋を行く。四ツ橋交差点では北東に旧・電気科学館がまだ残っている。最近まで、建て替え中の大阪市立中央図書館の蔵書を預かっていたが、もうすぐとりこわされるとのことだ。
 地名に川の名残を残す信濃橋を過ぎると、戦時中には飛行機の滑走路があったという靫(うつぼ)公園を左に見て、まもなく朝日新聞大阪本社や関西電力本社がならぶ肥後橋を通る。この橋を渡るときはなぜか御堂筋ではなかった丘を登るような高低差がある。
 そしてまもなく左手に梅田で一番高いビル「ハービス大阪」(190m)を見て、14:27大阪駅前に到着する。約1時間(実質39分)の大阪遊覧ツアーであった。

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