ほとんどのバスが動力としているディーゼルエンジンは、燃料(軽油)の安さと、排気量の割にパワーと制動力が出るという長所の反面、発進・加速時にエンジンに大きな負担がかかるので、燃料消費量が多くなるとともに排気ガスに含まれる黒煙と窒素酸化物(NOx)が増加するという欠点があります。
そこで、発進・加速時にエンジンにかかる負担を軽減することにより、燃費の向上と排気ガス中の黒煙やNOxの抑制を図ろうとして開発されたのが、この「HIMR(ハイエムアール=Hybrid Inverter Controlled Motor & Retarder System)」です。
「HIMR」は、エンジンに「発電機兼モーター」を内蔵し、コンピューターによるインバーター制御により、スターター(エンジン始動時)、モーター(発進・加速時にエンジンの補助)、発電機(アイドリング時にバッテリーに蓄電)、エネルギー回生装置(減速時に運動エネルギーを電気エネルギーに変換)、電気式補助ブレーキ(減速時)の1台5役の機能を持つ画期的なシステムです。
このシステムを搭載したハイブリッドバスは、バスの走行条件にもよりますが、NOxを従来の20〜30%、黒煙を70%程度減少させることができます。また、燃費も5〜15%程度向上します。
HIMRバスは、1991年12月20日に1両が中津営業所に配置され、1993年の1両を加えて計2両が現在運行中です。初回の導入は運輸省の指導によるもので、大阪市のほか4都市・1民営バスでほぼ一斉に営業が開始されています。
なお、製造メーカーは日野自動車です。
(参考:「大阪のあし」NO.114 平成4年1月)
この「MBECS(エムベックス=Motor vehicle Brake Energy Conservation System)」も、発進・加速時のエンジン負担を軽減することにより、燃費の向上と排気ガス中の黒煙やNOxを抑制する点では同じですが、補助動力として「油圧ポンプ兼油圧モーター」を使っているのが特徴です。
「MBECS」は、ディーゼルエンジンに油圧ポンプ兼油圧モーターを組み合わせ、窒素ガスを充填したタンク(アキュムレータ)に油圧を介して減速時の制動エネルギーを蓄え、発進・加速時に蓄えられたオイルを制動時の逆方向に流すことによって油圧モーターを回転させ、エンジンの駆動力をアシストしようというものです。(書いている本人が、実はよく分かっていないのですが...)
このシステムを搭載したハイブリッドバスは、排気ガス中のNOxを約25%、黒煙を50〜75%減らすことができるとのことです。
MBECSバスは、1994年2月1日に1両が九条営業所に配置され、1996年の1両を加えて計2両が現在運行中です。この導入も、HIMRと同じく運輸省の指導によるもので、大阪市のほか公営7都市、民営1社で各1両ずつ、計8両が全国で導入されました。
なお、製造メーカーは三菱自動車です。
(参考:「大阪のあし」NO.120 平成6年3月)
この「ERIP(エリップ=Energy Recycling Integrated Power Plant)」はシステム的には、MBECSとほぼ同じみたいです。
ERIPバスは、1995年に1両が住吉営業所に配置され、1996年の1両を加えて計2両が現在運行中です。
なお、製造メーカーは日産ディーゼルです。
この「天然ガスバス」は「CNG(Compressed Natural Gas)バス」とも呼ばれ、都市ガスとして一般的に使用されている天然ガスを燃料としたバスで、通常のディーゼルエンジンのバスと比べてNOx(窒素酸化物)の発生が60〜70%少なく、SOx(硫黄酸化物)や黒煙は全く発生せず、さらに騒音も5〜6%低いという環境にやさしいバスです。
また、実用的な走行距離を確保できるように燃料ガスは鋼鉄製容器に高圧で圧縮して搭載されているので、1回の充填で約170kmの走行が可能です。
天然ガスバスは、1995年2月1日に1両が長吉営業所に配置され、現在は長吉営業所に7両、鶴町営業所に5両が配置されています。この導入も、運輸省の指導によるもので、大阪市のほか東京都・川崎市・横浜市・名古屋市・京都市・神戸市の公営7都市と西日本鉄道(株)に各1両ずつ、計8両が導入されました。
なお、製造メーカーは、長吉営業所の7両が日産ディーゼル、鶴町営業所の5両がいすゞ自動車です。また、天然ガススタンドは、鶴町営業所と出戸バスターミナルにあります。
(参考:「大阪のあし」NO.123 平成7年3月)
○低公害バス全般に関しては、次のページに詳しいのでご参照ください。
ハイブリッド自動車のページ(VIRTUAL MOTOR SHOW「低公害車ハンドブック'96」(環境庁作成)より)
慶応義塾大学 西山敏樹氏論文「人と地球にやさしいバスを考える」